Atlessのアトラス

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“クールジャパン” 批判について

今日もお疲れ様です。

 

2013年 11月25日「株式会社海外需要開拓支援機構(クールジャパン推進機構)」

という組織が発足しました。

この “クールジャパン政策” が賛否両論を呼んでいるようなので、どのような組織か調べてみました。

 

簡単に想像できる目的としては、日本のカルチャーを世界に発信して、浸透させる組織といったところでしょうか。

どういうことをする組織なのか、まず情報サイト見てみました。

 

以下、2014年4月12日時点の『Business Journal』より抜粋します。記事は2月に出たものです。

http://biz-journal.jp/i/2014/02/post_4219_entry.html

 

 

 

官民が出資する株式会社海外需要開拓支援機構、通称クールジャパン機構を中心として経済産業省が主導するクールジャパンは、安倍晋三政権の経済政策であるアベノミクスの成長戦略の「第3の矢」のひとつに盛り込まれた。

 

 同機構はユネスコ無形文化遺産に登録済みの「和食」をはじめ、日本の伝統や生活文化、ファッション、アニメ、ゲームなどを手がける中小企業の海外展開を支援するための投資ファンドとして設立され、2013年11月25日から本格的に活動をスタートした。

 

 

 

 以上が抜粋です。

 

上記にあるように、この団体は「日本の伝統や生活文化、ファッション、アニメ、ゲームなどを手がける中小企業」を対象としているようです。

 

つまり、対象は「企業」であって、作り手である「個人」ではないようです。 

 

では、この機構は具体的に何をしようとしているのか。

 

2014年4月18日時点の経産省のサイトを参考にし、簡単にまとめると、以下の三段階を計画しています。

( ※ 参考:経済産業省ホームページ:『クールジャパンファンドについて(PDF形式:1,027KB)PDFファイル』)

 

 

(1)海外拠点作り

 

(2)海外拠点から日本カルチャーの発信

 

(3)海外実績をもとに国内からの発信

 

 

上記を確認すると、一見問題はありません。

海外で日本文化を発信するなら当然の行程といえます。

 

しかしこれ、優れた “個人” が海外で活躍する行程と同じです。

優れたアーティストが海外に渡り、現地で作品が評価される。海外で評価されて国内でも評価される。

 

この行程を中小企業を中心とした団体で実施しよう、というのがこの機構です。

しかし団体で実施しようとすると、カルチャーの種類や規模や可能性などを加味しなければならず、様々な調整が必要です。

しかも、一つの拠点で人数やカルチャーの種類を、どの位の規模にするかの戦略は立てれていないでしょう。

 

オリンピックの各競技のように、スポットの大会を目指した機動性の高い団体では、短期的に拠点を設けるのは有効です。

しかし、大会もない、期限もない、そうした団体が目的を果たしていくのは、かなり難しくなるでしょう。

 

そのため、(1)の「海外への拠点作り」だけを見ても、“団体のため” に拠点をつくるのはコストが大きいことは、想像に難くありません。

 

そもそもこの機構が発足した目的は、海外で日本カルチャーを広めるのがメインです。

それならば、逆に国内で各カルチャーの優れた “個人” を養成すべきではないでしょうか。

オリンピックで各国が国をあげて選手を養成するように、日本カルチャーの担い手を養成するのです。

 

この概要を読んでみると、現場の課題が書いてあります。

作り手や中小企業に海外拠点や、海外展開の資金が不足している、というのです。

課題分析はもっともですが、そこでの対策は、

 

○拠点となる空間(物理的空間/メディア空間)の整備・確保

○M&A・合弁設立等を含めた海外需要の獲得・拡大

○潜在力ある意欲的な地域企業の海外展開

 

の3つを挙げています。

 

こちらの対策も軌道に乗せるのは大変そうです。

現在でも、いや昔から、海外で評価されたアーティストは、現地の空間は提供されます。

それなのに、わざわざ現地に日本カルチャー用の空間を用意するのは、かなりのコストではないでしょうか。むしろ現地の雇用対策になってしまいそうです。

これではODAと変わりありません。

 

ただしアトレスは、一概にこの機構を否定しているわけではありません。

優れた才能は多くあっても、金銭的事情や国内の評価で埋没するクリエイターが多数いるからです。

紆余曲折しながらも、クリエイターの活躍や支援に結びつくのが理想です。

 

村上隆さんはこの “クールジャパン政策” をばっさり斬り捨てています。

 

しかし村上隆さん自身も、ロックフェラー財団の奨学金を受けてニューヨークに滞在しています。

この支援によるニューヨークでの活動がなければ、現在のアニメシリーズでの突破口はおそらく見出せなかったでしょう。

 

アーティストは経済的に苦境に立つ人が多いし、その中に未来に活躍するアーティストの卵もたくさんいるでしょう。

米価の下落を防ぐ政策である減反のように、クリエイターやアーティストに直接資金を提供するようなシステムはあってはいけません。

 

 しかし、間接的になら、経済的な支援を受ける意義は大きいのです。 

 

今年の3月時点で385億円の資産を持つ巨大組織が、今後どう日本カルチャーに影響するのか、その動向を注視したいと思います。 

 

 

では、何かあれば教えてね!