Apple製品のような、フラット感ある絵画
今日もお疲れさまです。
Apple製品は今や、持っていない人はいないと思えるくらい、世界中に普及しています。
機能面、操作性、デザイン、すべてにおいて無駄なく美しいのが特徴です。
iPhone、iPad、iPod…それらの背面ボディ部分は、非常に滑らかで美しい仕上がりです。
この背面ボディ部分を思わせる、美しいペインティングナイフの使い方をするアーティストがいます。
それが、アントニオ・ロペス・ガルシアさんです。
アントニオ・ロペス・ガルシアさんは、超写実主義のアーティストです。
食卓、植物、風景などを、写真と見紛う細かさで描いています。
彼の作品は一見すると、写真のようにすべてを細かく描いているようです。
しかし、よく見ると違います。
建物の壁、葉っぱの表面、皿、人間の頬など、モチーフの “面” になる部分を、巧みに省略しています。
ペインティングナイフで、塗りっぱなしになっているのです。
本来、建物の壁には凹凸や汚れや傷跡があり、葉っぱには葉脈があり、皿にも凹凸や模様があります。
よく見ると、それらをペインティングナイフで塗りっぱなしにしています。
『View of Madrid from Torres Blancas』(1974-82)という、マドリードの街並みを描いた作品があります。
この作品で描かれた建物の壁も、よく見ると、塗りっぱなしの部分が散在します。
塗りっぱなしは一見、未完成に感じてしまうものですが、アントニオ・ロペス・ガルシアさんの作品は、逆に “塗りっぱなし” により完成度を高めています。
なぜ “塗りっぱなし” なのに完成度が高いのか。
それは、塗りっぱなしの部分が非常に美しく見えるからです。
また、壁の傷や細かな凹凸、葉っぱの葉脈、皿の凹凸を描き込まず、塗りっぱなしにすることで、立体感を失わずに済んでいます。
こうしてアントニオ・ロペス・ロガルシアさんは、 “描かないことによる美しさ” を獲得しているのです。
ガムシャラに細部を描き込むアーティストの作品も、確かに質量があり、とても魅力的です。
しかし、描かずに見せるアントニオ・ロペス・ガルシアさんの作品は、“大人の気品” があります。
作品から「描き込まないで描いたように見せれるなら、描かないべきだ」という強い意志を感じます。
全体的に無駄を削ぎ落とした美しい作品もありますが、全体が細かな写実に見える作品においても、“無駄がない美しさ” を追求した作品があるのです。
では、何かあれば教えてね!