Atlessのアトラス

アート中心に思考したことを書いています。Atless GALLERYで作品を常設展示中。

「固有色」を使ってはいけない理由

今日もお疲れさまです。

油絵の初心者にとって、目の前のモチーフを見えたまま再現するのは難しい取り組みです。

なぜなら油絵の初心者ほど、モチーフを “シンプルに表現する”からです。

“シンプルに表現する” とはどういうことか。
例えば、モチーフを輪郭線で描いたり、“固有色” で描いたりすることです。

特に油絵について初心者の人は、“固有色” を使用しがちです。

“固有色” とは、モノが本来持つ固有の色、ということになります。
レモンなら黄色、リンゴなら赤色、人肌なら橙色、などです。

油絵の初心者は、こうした固有の色を使用して、一気に油絵を進めようとする傾向があります。


そして、実際に固有色を使用すると、指導者から注意されることになります。 
「固有色は使ってはいけないよ」と。

注意を受けた側としては、納得がいきません。
「黄色のレモンを黄色にして何が悪い」と考えるわけです。

でもこの考えが、問題です。

なぜか。

実際に見えるレモンは、確かに黄色です。
しかし、モノにはそれぞれ “明暗” があります。
レモン一つの中でも、白に近い明るさから、黒に近い暗さの場所があります。

“明暗” の階調は明るい場所から暗い場所まで様々な階調が存在します。
そのためレモン一つの中に、多くの明暗の階調が存在し、固有色の黄色は部分部分の明暗の階調と結びつき、部分によって “違う黄色” になります。

そのため、絵の具のチューブから出した一色の黄色をベタ塗りしても、レモンの “複雑” な黄色は表現できないのです。


また、反射光の影響もあります。
周囲に置いてあるモチーフの色は、光を受けて反射し、周囲にモチーフの色をぶつけています。
そのため、レモンの近くに別のモチーフが置いてあれば、そのモチーフの色も投影されます。

すなわち、レモン一つとっても、膨大な “色彩の情報” を含むのです。

モチーフ一つが膨大な “色彩の情報” を持つことが理解できれば、当然、“固有色” で描き進められないことが、わかりますよね。


では、何かあれば教えてね!