Atlessのアトラス

アート中心に思考したことを書いています。Atless GALLERYで作品を常設展示中。

クリスチャン・ラッセンさんの作品はアートか

今日もお疲れさまです。

 
本日のエントリーに入る前に、前回のエントリーの整理をしておきます。
 
前回はイラストと絵画の違いについて描きましたが、絵画とイラストが、それぞれアート作品かどうか、ということについて、触れていませんでした。
 
前回、絵画は “絵画そのものによって、何らかの伝達をする” ということを書きました。
そしてアート作品も同様に、“作品そのものによって、何らかの伝達をする” のがアート作品です。
 
そのため、
絵画 = アート作品
となります。
 
一方、イラストは “文章など何らかの伝達手段を、わかりやすくするために機能したもの” ですから、
イラスト ≠ 絵画
となります。
 
ゆえに、イラストは絵画ではないため、
イラスト ≠ アート作品
となります。
 
しかし、イラストが “何らかの伝達をわかりやすくする” のでなく、イラスト単体で機能した場合は
イラスト→絵画
となることを書きました。
 
 
 
さて、上記までの前提をもとに、今回の本題に入ります。
 
 
クリスチャン・ラッセンさんは、ハワイの海の景色を中心として作品を展開しています。
デパートなどで、よく版画やポストカードを見かけますよね。
 
非常に有名なため、その作風を知らない人は、ほとんどいないでしょう。
 
そして、よくアート作品を作る人たちで話題になるのが、今回の
“クリスチャン・ラッセンさんの作品はアートか” という議論です。
 
とはいっても、アート作品を作る人たちの認識は
「クリスチャン・ラッセンはアートではなく、イラスト」です。
議論にすらなっていません。
 
なぜでしょうか。
 
クリスチャン・ラッセンさんの作品は
“一般大衆に広くウケる、わかりやすい作品だから”
 
というのが、「ラッセンはアートではなく、イラスト」とされる理由でしょう。
実際に、現代アートの業界では全く評価されていません。
 
しかし、この理由ですと、奈良美智さんの作品も “アートではない” ということになります。
なぜなら、奈良美智さんの作品は、一般大衆に広くウケる、わかりやすい作品だからです。
 
ところが、奈良美智さんの作品は、現代アートの業界でも絶大な評価を得ています。
 
それは、“一般大衆に広くウケる、わかりやすい作品” という要素にプラスして、
“作品そのものによって、何らかの伝達がされている” からです。
 
では、
クリスチャン・ラッセンさんの作品は “アートではない” のでしょうか。
 
結論としては、アートです。
 
なぜなら、
“作品そのものによって、何らかの伝達がされている” からです。
そして、“何らかの伝達をわかりやすくする” という機能を超えて、作品単体で機能しています。
 
クリスチャン・ラッセンさんの作品は、
「綺麗なハワイの海の世界」を鑑賞者に伝達しています。
 
そのため、アート作品として成立しているのです。
 
 
ただし、その主張は、非常にシンプルです。
 “ハワイの海の景色の代弁” という機能以外に伝達されるものがありません。
 
鑑賞者も、「綺麗なハワイの海の世界」という認識しか持つことができません。
 
そのため、極めて高い技術で仕上げられ、綺麗な色合いで表現されていても、全て「綺麗なハワイの海の世界」という認識の “外の世界” がないのです。
 
表面的な技術は極めて高いのに、鑑賞者に新しい経験を与えるような伝達はない。
それが、クリスチャン・ラッセンさんのアート作品なのです。
 
しかし、絵画がなんとなく好きだったり、アートに興味を持ち始めた人には、表面的な要素が非常に重要です。
クリスチャン・ラッセンさんの作品は、表面的に魅力的な要素が多いため、一般大衆に広くウケるのです。
 
 
では、何かあれば教えてね!